熊本に戻り、新しい家を建てたこの一年。
私には、一生忘れることのできない大切な時間がありました。
それは、85歳で生涯を閉じた父との最期の日々です。
私の父は、とても厳格で厳しい人でした。
昔気質の不器用な人で、優しい言葉なんて一度もかけてもらった記憶はありません。
時には激しくぶつかり合い、「どうしても許せない」と心に壁を作った時期もありました。
けれど、病を患い、喉を切除して、喉元の器具を押さなければ声も出せない状態になっても。
栄養を摂るために胃ろうを余儀なくされても。
父は、最後の最後まで「生きること」を諦めませんでした。
「もう一度、家に帰って農業をしたい」
その一念で、一生懸命に命を繋ごうとする父。
見るのも辛いほど過酷な状況にあっても、一人の男として、人間として、最後まで自分の人生を全うしようとするその姿は、子どもや孫たちの目に、どんな教えよりも強く、誇らしく焼きつきました。
「人間は、こうして最後まで生き切るものなんだ」
言葉ではなく、その背中で。
父は私に、人生で最も大きな学びを遺してくれました。
今、この歳になり、私自身も多くの経験を重ねて、ようやく分かった気がします。
厳しい言葉の裏側にあった、父なりの不器用な優しさが。
父が命をかけて見せてくれた、あの「生き切る姿」。
それを見た私が、今さら「年齢」や「環境」を言い訳にして、守りに入ってどうするのか。
自分の価値を信じ、やりたいことに情熱を注ぎ、最期の瞬間に「やりきった」と胸を張れる人生を送りたい。
父が教えてくれた誇りを胸に、私は再び福岡というステージで、私にしかできない挑戦を続けていきます。
お父さん、本当にありがとう。
あなたの娘に生まれて、よかったです。
